ローカルインタビュー

「青葉台の人がゆっくりできる場をつくりたい。りんごを使ったスイーツと家庭料理で幅広い世代がほっこりできるカフェ」

Rin5Life 佐藤真優子さん

子どもの頃から住む青葉台の街で、誰もがゆっくりできるお店を目指して

階段を登ってドアを開けると、ずらりと並んだりんごの置物が目に飛び込んできます。
Rin5Lifeは、りんごを使ったスイーツ、ドリンクが豊富な人気のお店です。オーナーの佐藤真優子さんは、青葉台に初めて住んだのが幼稚園のころという青葉台育ち。両親ともに青森県の出身で、今も母方の祖父母が津軽地方でりんご農家をしています。青葉台と青森、両方をふるさとのように感じているそうです。

お店がオープンしたのは2011年9月。2021年の今年、10周年を迎えます。

 

両親の故郷・青森とおじいちゃん、おばあちゃんが育てているりんごがテーマ

「実はオープン当初の店名は『フロンティーダ」でした。祖父母がりんご農家でおいしいりんごが手に入りやすかったので、メニューにたくさん使っていました。秋冬にはりんごをお店で販売もしていたので、いつの間にかお客さんたちから『りんごの店』『りんごカフェ』と呼ばれるようになっていたんです」

そんなにりんごの店だと言われるならばと、今のRin5Lifeに店名を変更したのが2015年のこと。店の中にもりんごのモチーフが増えて、名実ともにりんごのお店としてますます人気になりました。

ランチは「一汁三菜膳」がおすすめ。メインの料理にデリやサラダ、ご飯をひと皿に盛りつけています。

「外で家庭料理のような和食を食べる機会はそんなにありませんよね。Rin5Lifeに来たら、身体に優しくて、しみじみおいしい和食を食べてもらって、ほっこりしてもらいたいと思っています」と佐藤さん。

青森県民のソウルフードの万能ソース「スタミナ源たれ」を使ったメニューもあります。この「スタミナ源たれ」は、青森では家庭に必ずあるソースとして知られていますが、東北以外では知名度は高くありません。Rin5Lifeで「スタミナ源たれ」に初めて出会って、便利さとおいしさに魅了されてリピート買いするお客さんも続出しているのだとか。最近では関東のスーパーで見かけることもあるそうです。

「コロナ禍前は、年配のお客さんがランチを召し上がって、それからお茶を飲んでと、ゆっくり時間を過ごしてくださることが多かったんです。ところが、この1年はスイーツを目当てにいらっしゃる20代のお客さんが増えました。スイーツが写真映えするという口コミがSNSで広まったみたいなんです」

時節柄、現在お店は予約制ですが、予約してお店でスイーツを食べようと訪れる若いお客さんが増えました。りんごを使ったスイーツは「アップル&パイ」や「林檎のチーズケーキ」など季節によって様々。その中でも一番人気は「自家製キャラメル林檎ケーキ」で、お客さんの声に答えてテイクアウト販売も始めたそうです。

 

青葉台に戻って見えてきた、街がきれいなのは住民の心がけのおかげ

子どもの頃から長く青葉台に住む佐藤さん。社会人になって2年弱、青葉台を離れていた時期がありましたが、それからは青葉台の中で引っ越ししながら、ずっと青葉台に住んでいます。青葉台にどんな魅力を感じているのでしょうか。

「別の街に住んで、戻ってきて分かるようになったのですが、高齢の方々がとてもおしゃれなんです。身なりだけでなく、自宅の表なども小綺麗にしようと意識して暮らしている方が多い。青葉台はそういう意識がある人が住んでいる街だから引っ越してこられる人がいるのでしょうし、もともと住んでいる方もこの街のよさを維持していこうという気持ちを持っている方が多いのだと思います」

東急沿線の中でも、憧れのひびきをもって語られることの多い青葉台。憧れの街であり続けているのは住民のみなさんの心掛けがあるからこそ。一方で、佐藤さんは青葉台に住む人は、大人しいところがあることも感じていると言います。

「青葉台は街としての規模は大きくて都会的な部分があるので、その分、住民同士のつながりが希薄だなと思います。大きな変化を好まない方が多いのか、自分から動いて新しい情報を求める人があまり多くないですね」

青葉台はリフレッシュの最中。幅広い世代でコミュニティを作り直すべき

コロナ禍で人が集まるイベントが難しくなった今、佐藤さんがあったらいいなと思うものは地域の情報が当たり前のように手に入る環境だと言います。

「これまで仲間同士でいろんなイベントを開催しましたが、それ以外にも、例えば神社のお祭りやどんど焼きのようなもともとある地域の行事がどこで行われているかも、住民には伝わっていないように思うんです。買い物に出たときや、駅での待ち時間などに、地域の情報が自然と、むしろ強制的に目に入るような仕組みがあったらいいと思います」

スマートフォンで誰もがつながることができ、求めた情報は何でも手に入るけれど、世代や暮らし方によっては、地域の中にある身近な情報にこそ触れる機会が少ないのかもしれません。それでも、青葉台で地域とのつながりを求める人たちとの交流の場もあり、佐藤さんも積極的に参加しているそうです。

「お店を始めてから、『AOBADAI FACE TO FACE』という青葉台でお店や事業をやっている人を中心とした異業種交流会に参加して、飲み仲間が増えました。そんなつながりがきっかけで、コロナ禍前は青葉台のお店が集まってバーベキューイベントもやっていたんです。通りすがりの人に振る舞ったりもしていました」

 


加えて、今の青葉台について「街としては、リフレッシュする時期に入ってきています。駅前のビルも建て替え中ですしね」と佐藤さんは言います。

子どもの頃は青葉台駅を”青駅”と呼んで、集合場所は”青駅のバレリーナ像*前”がお決まりだったという佐藤さん。子どもの頃から青葉台に住み、Rin5Lifeを開いてからは広い世代のお客さんとの関わりを持ってきた佐藤さんだからこそ、街が新しいフェーズに移る今、幅広い世代でコミュニティを作り直す機会を望んでいるようです。

SPRASはコワーキングスペースとしての機能と地域のみなさんが集まれるコミュニティラウンジやイベントスペースとしての機能も備え、ワークショップや交流会も開催します。

青葉台駅からすぐの青葉台郵便局の2Fという、住民のみなさんにとって馴染みの深い立地を生かし、佐藤さんも期待する「広い世代でのコミュニティづくりの場」にしていきたいですね。

*茂木弘行作「ゆめ」