ローカルインタビュー

「生まれも育ちも青葉台。今も昔もそしてこれからも見守り続けるエリアの魅力とは」

青葉台南商店会会長 下山和正さん

街の中心、商店会から見る青葉台

東急田園都市線青葉台駅から徒歩4分のところにある青葉台郵便局。その2階に、街の人たちが利用できる「SPRAS AOBADAI」が誕生しました。ワークラウンジのほか、催し物を行うことができるイベントスペースやコミュニティラウンジで構成されています。

そんな「SPRAS AOBADAI」がある青葉台は一体どんな街なのか。青葉台の街づくりに携わる人たちのお話を聞き、改めてその輪郭を見つめ直していきます。

今回、お話をうかがったのは青葉台南商店会会長の下山和正さんです。

青葉台駅の南、環状四号線沿いにある商店が多く加入している青葉台南商店会。長い歴史の中で、商店会はどのような役割を果たしてきたのか、そして商店会から見た青葉台は一体どんな街なのかお聞きしました。

 

街を見守り続けた青葉台南商店会の歴史

駅周辺の開発が進む前から青葉台に住んでいるという下山さんにとって、唯一無二の“地元”はどのように映っているのでしょうか。

「“地元の人”って言ってもいろいろな人がいます。僕のように開発前から住んでいる人もいれば、開発が進んでから移り住んできた人もいる。とはいえ、開発が進んでから住み始めた人たちももう40〜50年この地で暮らしていますから、もう青葉台が地元みたいなものなんですよね」

ご自身は造園業や農業を営んでいる下山さん。商店会に加わったのは約10年前のこと。会長職に着任されてからは4年になります。

「商店会自体は、できてから41~42年ですね。加入している店舗数はだいたい50ぐらいかな。もとは青葉台連合商店会という形で商店会が立ち上げられました。そちらの歴史は50年を超えます。その中で発展していくことで、地域ごとに分割できるだけ大きくなっていったんです。青葉台南商店会も連合商店会から分離した形になります」

歴史があると、それだけ商店会にも変遷が生まれます。青葉台南商店会にもさまざまな変遷がありました。もちろん昔からずっと加入しているお店もあれば、最近加入したというお店も。

「隣にある田奈駅を中心とした田奈商栄会という商店会があったんですけど、20年ほど前に解散したんです。そうなると、やはりお店同士のつながりがなくなってしまいますよね。つながりを求めて、隣接する青葉台南商店会に加入されたというお店もあります」

地元に密着し、お店を経営している人たちにとっても大きな存在である商店会。青葉台南商店会も地域の人たちにとって“要”の存在となっています。

「多少変化していく過程の中でも、時代に振り回されないのが青葉台南商店会の良いところだと思います。地道に長く商売して、住民の皆さんと交流していく中で、その時代にあったスタイルを発見できているというか。

商店会の中で歴史や実績も積み重ねて、熟成されてきたものがあるし、短期的な成果は得られないけど、その分、踏ん張る力というのはあります。それはそれぞれのお店でも同じことが言えるのではないでしょうか」

 

青葉台エリアの良いところは“人の良さ”

商店会会長として地域を見続けてきた下山さん。そんな下山さんが青葉台エリアの良いところとして真っ先に挙げたのは「人の良さ」でした。

「商店会活動で会員や住民の皆さんやと触れていると、人の良さというのが分かりますね。そういう人が多いのは、青葉台エリアが住みやすい場所だというところも大きいと思うんです。地理的ポジションもあるかなと思うんですけど、自然や文化的資質、交通の便が快適というのも、住まれる方たちの人間的な豊かさにつながっているのかもしれません。

人の入れ替わりはありますが、昔から住んでいる地元の人だけでなく、新しく越してきた人も含めてみんなが青葉台エリアを自分のものだと感じているんじゃないですかね。

僕自身もここを離れるということを思ったことはありません。基本的に離れられないというのもあるんですけど、この場所が嫌だと思ったことがないんですよね。それはやっぱり安定感があるからというのは大きいです。田舎とも都会とも程よい距離感があって、どちらも身近にあるというのも大きな理由だと思います」

 

コロナがきっかけで商店会のあり方を考え直した

昨年から続くコロナ禍で、さまざまな人たちが今の自分たちの状況について考え直すこととなりました。下山さんが会長を務める青葉台南商店会でも、新型コロナウイルスの影響はひとつの分岐点となっています。

「商店会でも、コロナ以前はイベント中心でしたが、これからはイベントのスタイルも変えていかなければならない。そもそも、『イベントってなんだったのだろうか』ということを見つめ直す時に来たのかもしれません」

世間ではコロナが飲食店を始めとして、多くの店に打撃を与えています。変化はありつつも、青葉台南商店会ではそういった変化は少ないそうです。

「わりと地元の中で消費しているという地盤があったのかな。お店がお弁当とかテイクアウトを始めるなど、それぞれ努力しているというのもあります。商店会に長く加入してくださっている皆さんは、想いとか、踏ん張りとか、長年積み重ねたものが発揮されていると思います」

一方、コロナをきっかけに、青葉台エリアにとってはメリットがもたらされるのではないかと下山さんは言います。

「コロナを機に、同じ時間帯に大勢の人がすし詰めになって都会へ通勤し、同じ時間に地元に戻ってくるのが問題だと感じた人も多いですよね。地元に足場を置いて、街ともつながっているけどもう少し偏らない、職場も生活も近くにあるという環境が整えられたらいいですよね。二面性を同時に持つという感じでしょうか。そうなると、いままで都会で発揮されていた人の才能や能力が地域に落とし込まれていくというメリットがあるように思います。

 

SPARSに望む新たな出会いと街との化学反応

今回、青葉台郵便局の2階で開業する「SPRAS AOBADAI」に対して、下山さんは何を期待しているのでしょうか。

「青葉台郵便局には50年を超える長い歴史がある、青葉台の中心となっている場所です。そういった拠点とも言える場所で、目的をもった場所ができるのはとても意味が大きいものだと思っています。この取り組み自体が僕たちの目的と共通の意味があるのかな、と。

有効に使われるといいですよね。

商店会としても協力できるところはさせていただきたいし、いろんな人たちがここで出会って、マッチングされることによって、新たに問題提起されたものも解決できるようになるんじゃないかな、と思います」

商店会という街の人、経済を見てきたからこそ、街の「これから」について馳せる想いは大きいのでは、と感じられるインタビューでした。「SPRAS AOBADAI」もまた、街の発展のきっかけになるような出会いが望まれているのかもしれません。